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06/05/2007

イエン 5

とにかく。その夜も、あいかわらず、たいしてお金をつかうわけでもなく、カウンターでひとり飲んでいた。カラオケボックスに呼ばれないであぶれている女の子と特になんの意味もないベトナム語の会話をだらだらするだけ。もちろん客がいるときなんかほとんどなかったが。

 その夜もお客は少ない。カウンター席から振り向けば、女の子たちはひまそうにビリヤードをやっている。いつも客がいないせいで、練習もたっぷりできるのか。彼女たちはやたらビリヤードが上手かった。私がたまに参加するときなんかは、いつも手加減してくれるのだった。わたしといえば、ぶざまに負けたくないのだが、かといってゲームに勝ちたいとも思わない、そんな気分のことが多くて、つまりは盛り上がりにかけることになるので、滅多に遊ぶことはなかった。

イエンがやってきて

「アシタはココにイキマスカ?」と日本語で私に言った。(日本語が微妙に間違ってた)

「くるとおもうけど何故?」と聞くと?

仕事を辞める。故郷のハイフォンに帰る。明日、残っている給料を貰いに来るの。それで最後だといった。はじめて、彼女の月給が100ドルだったと知った。

翌日は外で待ち合わせて一緒に行った。のだったか?私が先にきて彼女があとからやってきたのか?いまではそれさえも定かでない。

カウンターに並んで座っている。イエンはいつもの紺のドレス姿ではなくジーンズスタイルだった。今日はプライベートだからドレスのわけはないのだ。彼女はコーラかなにか頼んだのではないだろうか?私はバーボンかなにかだったんだろう。もしくはタイガービール。

イエンとの最後の夜だった。とはいえ、なんのハプニングも起こるはずもない静かな夜だった。私は、何故わざわざ誘われたのか、もうひとつわからなかった。

「女の子はみんなお金目当てだから気をつけなさい。」と、イエンは私に言った。よほど、私は危なっかしくみえるらしい。そんなことは百も承知だ。と心の中で思った。

飲んで、話をしていると12時過ぎになった。私は「帰る。」と告げた。帰ろうとする私にイエンの同僚のトゥイが「1人で帰るの?」とベトナム語で冷やかした。

イエンのハイフォンの連絡先を聞くとコースターの裏に電話番号を書いてくれた。会う機会があるとは思えないが、連絡先を聞くだけで、なんとなく安心する。おもえばそれが、離れていく人の心理なのだろう。そのコースターも、どこかにいってしまった。

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