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23/08/2006

その夜は楽器が鳴っていた。

楽器が、鉦と太鼓が賑やかに鳴っていたように記憶している。

もう日は落ちている。家の前の暗い通りには机と椅子が並べられている。手伝いにきていた(私の勤めている会社の)社員N君に案内されて空いた席に座った。見知らぬ男性から煙草を勧められる。近所のひとなのだろう。とにかく渋いお茶をすする。母親らしき人が挨拶にきた。

家にはいると、演奏がはじまり、嗄れた声が、独特の節で詠い、我々の訪問を告げている。

***社の日本人が***の別れのためにこの家に来ました・・・・。

とでも言っているのだろう。「会社」や「日本人」という単語が聞き取れた。線香を供えて。日本式に手を合わせて。正しいやり方は知らないからだ。悲しい時はなんとなく笑っているような顔になるのが私の癖なので、なるべく無表情を装うことにした。

自殺だった。殺鼠剤を飲んだのだという。お腹に子供はいたのだろうか?そんなことは誰にきけばいいのだろう?

彼女と親しく会話を交わしたことはなかったが、彼女のことはよく覚えている。

一度だけ、彼女が事務所を訪ねてきたことがあった。「結婚したので、夫の家から通えるよう、職場の配置を変えて欲しい」と。

話を聞きながら、胸が大きいなあ、と思った。おそらく私の視線が胸にいったのだ。彼女は体を動かし、視線を逸らした。私はすごくバツの悪い思いをしたのだった。恥ずかしい限りである。彼女は私のことを、すごくスケベな日本人と思ったに違いない。

そんな格好悪い思いをしたことがあったので、私は彼女のことをよく覚えているのだ。それに。もしかして、妊娠していたから胸が大きかったのだろうか?などとも考えることがある。いまとなってはわからない。しかし、彼女はそのとき幸せだったのだ。

この家の葬式にでたのは2度目だった。先に、彼女の夫が病気で死んだ。SIDAである。それが、彼女が死を選んだ理由だ。将来を悲観したのだ。

まだ正しい知識がないことも手伝って、なにか風評でもたつのだろう。彼女の夫の埋葬の時には、棺桶の担ぎ手もいなくて、社員が手伝ったのだと聞いた。

彼女の翌日の埋葬がどうだったのかはよく覚えていない。私の記憶の中では、彼女の胸と、楽器の演奏が繰り返される。

・・・・・・・・蛇足であるが、少し背景を書いて置きたい。

彼女の夫も会社の従業員だった。つまり職場結婚だ。T氏が保証人だったという。彼の病気のことをT氏は知っていたのだろうか?少なくとも元MA TUY中毒者だったことは知っていたはずだが・・・。

(5line 削除)

そのT氏も今はいない。

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