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29/07/2006

イエン 4 (改)

イエンの出身はハイフォンだと以前に書いた。ハイフォンは北部の国際的な港湾都市で、だから、なんとなくイエンは都会の女性のイメージだった。

確か、9月の独立記念日の連休だった。9月は天候が不安定になって、雨の日が増え、急に冷え込んでいく。夏が終わる月である。子供たちの夏休みはその連休で終了するから、そういう意味でも区切りなのだ。私はいつもの休日のように海岸沿いを散歩していた。特別な日という感覚はなかったがやはり祭日なのだ。今では綺麗なカラーブロックを敷き詰めた歩道になっているが、穴だらけの歩道だった頃と同じように、物売りが、観光客目当てに小さな店を広げている。ベトナムのおばちゃんがノンを被って地べたにしゃがみ、籠にはいったブオイ(ざぼん)やオーイ(ぐあば)なんかを売っているのだ。それらを買うと新聞紙の皿に入ったパプリカ混じりの塩こしょうを付けてくれる。ベトナムの果物は甘みがないからそれをつけて食べる。半透明の赤い、きわめて薄い、日本で言うレジ袋に入れてもらい、オーイをかじりながら散歩を続けてもいい。

雨の季節になってコンビニの前を通ったりするとイエンのことを思い出すのだ。

その日、ハロン通りのちょうど、Hホテルに向かう三叉路のあたりで、普段着のイエンに逢った。

知り合いのいない異国の街角で、偶然、顔見知りに出会うのは、普段は無愛想な私でも、うれしいことだ。

とはいえ、この田舎街では、イエンはいってみれば水商売を生業にしているわけなので、一般ベトナム人からみれば、あまり、よろしくない光景なのだろう。などと、思ったりもした。外国人は金持ちの女好きで、そこにくっついているベトナム女性は金に目がくらんだカーベア(商売女)というわけなのだ。そういうことをわきまえているのか、イエンも必要以上に愛嬌をふりまくこともなかった。まあ、いつも、そうで、そこが何となく都会的な女性の雰囲気で、私は好感を持っていたわけでもあった。

ここでバスを待っている。親戚の子供が乗っているから。

とイエンは言った。それから、わたしは、子供は何歳?などと無難な会話をしたはずだ。

覚えているのは、そのとき急に雨が降り出したことだ。大粒の雨。スコール。

その頃のベトナム庶民の傘の保有率なんてたいしたことなかった。従業員も殆ど持っていなかった。雨はノンでしのぐか、ペラペラのきわめて薄いビニールのレインコートか、その程度だ。日本人のわたしも、突然の雨で傘はもっていなかった。

イエンはあわてず物売りのおばちゃんに話しかける。レジ袋を、きわめて薄いレジ袋をもらい受けて、なんの躊躇もなく、いつもそうしているかのような、自然な動作で、半透明のレジ袋をすっぽりと頭に被った。

そして私に

使いなさい。

とレジ袋を差し出す。必要ないよ。と、わたしはことわった。もちろん、どうにも格好悪いからだ。レジ袋をかぶるくらいなら、ぬれた方がましである。

そのとき、ああ、イエンと私は違う環境で育ったんだなあ。と静かに思ったのだった。

そんなことを雨の季節になると思い出すのである。

随分あとになって、親戚の子供ってイエンの本当の子供だったんだろうなあ。と気が付いた。そして、レジ袋を被って、雨のハロン通りを散歩する親子の姿を思い浮かべた。

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