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29/05/2006

旅行記 表バージョン4

君は空港からのバスを降りた。

トランクの傍らに立っている君はどこからみても旅行者だ。でも、以前のように宿の客引きが寄ってくることはなかった。道路の向こう側のファングーラオ通りの店を、君は目で探している。新しいレストランができていて、うまく記憶と結びつかない。もう無くなってしまったのかな。と、つぶやく。店と行っても、道路にテーブルと椅子を出しただけの簡易なものだったけれど。君は「ソンちゃんの店」としてその店を記憶している。

君は気がついていなかったが、ソンちゃんの店は、ガイドブックの、地球の歩き方の97年~98年版以前の版には載っている。159番地だから「159」。ガイドブックの地図にはそっけなくそう記されている。

地球の歩き方マガジン’98 春号によれば「美人姉妹の切り盛りするお店」として紹介されているのだけれど、そのことも、君は知らないだろう。ビアホイとヤギ鍋がメインのメニュー。ビアホイは2リットルで8000ドン。ヤギ鍋は2万ドンだった。T&Tトラベルという日本人が経営している旅行社があった。そこが配っていた周辺地図には「159 SON」と書かれているのだから、君と同じように日本人の間ではソンちゃんの店と呼ばれていたのかもしれない。

昔の159は昼間の客も少なく、のんびりしたもので、私は、ぬるい飲物を飲みながら、そこの看板娘の、HOAに、片言のベトナム語を教えてもらったり、文庫本を読んで過ごした。客のいない隣りのテーブルで少女が、宿題なのだろうか、ノートを広げていたりした。

数年後だったかに訪れるとHOAは結婚してハノイの方にいってしまったという話だった。かわりに、ソンが主となって切り盛りしていた。ビアホイを買いにいったり、氷を買いにいったりしていた。ソンは日本語学校で日本語を習っていた。メニューも日本語が併記されるようになっていた。

宿題をしていた少女がアオザイの高校生になっている。そして君はすっかり日本語が上達したソンちゃんと「男は信用出来ない」というテーマで盛りあがっていたのだ。

それから、5年ぶりの159なのである。

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